たまご

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彼女はさっきから、ぷちぷち、とかわいい音を立てて自分の髪の毛を片手で抜き続け、それは、カラオケボックスの真ん中に寂しく置かれた丸いテーブルの上に小山をつくっていた。 僕はというと、ここに来たからといってなにかを唄うわけでもなく、もうとっくに火の消えたタバコを灰皿に押し付け続けていた。 彼女の頭には、ちいさく毛の生えていない場所がいくつもある。いちど始めると、一日中同じ場所を抜き続けるのだ。
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