序幕

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その灯りに驚いたのか、男は顔を上げそちらの方向を見る。オレも灯りの方向を見た。逆光で顔は見えないが、数人人がいる。 「お前、そこで何してんだ?」 低い男の声が、この男を威嚇するように言った。オレの上にいる男がビクリと震えたのがわかる。 すると、男は何を考えたのか急に立ち上がり、灯りの方の男に斬りかかりに行った。 その一瞬。 灯りが落ちた。 次の瞬間に、少しのうめき声の後にドサりという音がした。 「…ー21時38分、現行犯逮捕。」 カチャりと音がして、さっき斬りかかられた男じゃない人達が男を連れて行った。 あぁ、助かったのか… 安心と共にため息が出た。 「お前、大丈夫か?」 灯りを持って、さっきの男が走って近づいて来た。 オレを見て眉をひそめ、かがみこんだ。 「すまねぇ…俺達がもぅ少し早く来ていたら…」 申し訳なさそうな…今にも泣きそうな顔をして謝るもんだから。思わず微笑んだ。 「それでも、アンタは…助けて、くれた…」 そう言ってオレは意識を手放した。 次に意識を取り戻したのは、先生の家だった。 あの後オレは、3日間寝ていたらしい。 先生はオレが起きるとまず最初に怒った。そして、抱きしめてくれた。 後で先生が教えてくれた。 オレを助けてくれたのは『新撰組』の土方だと。 礼を言いに行きたいと言ったら、先生がたっぷり礼を言ったからいいんだと言われた。 納得出来なかったけど、先生のあの顔を見たら行ってはいけないのだと悟った。 理由は知らない。 でもそう思ったんだ。
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