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空が段々明るくなってきた。もうすぐ夜が明ける。
僕はベッドから出て、部屋の電気を付け、タバコを吸い始めた。煙がゆっくりと昇っていく。
今日も一睡も出来なかった。ベッドに横になり目はつぶるのだが、全く寝られない。
僕は朝が来るのが恐い。一日が始まると思うと、胃がきゅうっとなる。学校に行きたくない。毎朝そればかりを考えている。
しばらくボーっとして、階段を下り一階に行った。お母さんが台所で朝食の準備をして、親父は茶の間でめざましテレビを見ている。
天気予報をしていて、情報カメラが東京の街並を映している。道路を車がひっきりなしに通っている。日本は確実に動き出していた。
朝食の時、親と一緒に食卓についたが、一口で箸を置いた。食欲がなく、胃が全く食べ物を受けつけない。しかし親はなにも言わなかった。これは今日に始まったことではない。毎朝の日常の光景なのだ。そして薬袋から薬を取り出した。僕は心療内科に通院していて、精神安定剤など三種類の薬を常用している。僕は慣れた手つきでそれらを胃に流し込んだ。
「ごちそうさま。」
僕は自分の部屋に戻ると、ジャージから学ランに着替え始めた。そして髪をワックスでセットする。まだなにもしていないのに、すでに心臓がドキドキしている。
準備を終え、洗面所で身だしなみのチェックをした。
ひどく顔色が悪い。「おえっ」僕は突然えずいた。なにも食べていないから、なにも出るはずはないのに、僕の胃はなにかを吐き出そうとしている。僕は水を飲み、目を閉じて深呼吸した。しかし動悸は全くおさまらない。
「学校に行きたくない。」
それ以外考えられなかった。しかし僕はコートを着て、家を出た。
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