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外は快晴だった。冬の匂いが微かにする。そろそろ初雪が降るのかもしれない。学校には自転車で行っている。高校に入学してもう八ヶ月が過ぎようとしていた。
僕は今の学校に入学する為に、中学ではけっこう勉強をがんばった。合格発表で自分の番号を見つけた時の喜びは今でも覚えている。あれほど行きたかった学校なのに、今は死ぬほど行きたくない。
学校が近づくにつれ、呼吸が荒くなってきた。別に自転車をこいだからではない。でも呼吸が荒く、動悸もひどくなってきている。口には胃酸に近い苦い唾が溜まってきている。
「もう帰りたい。」
僕は薄れる意識の中でそう思ったが、どうにか学校に到着した。自転車置き場に自転車を停めると、昇降口で上履きに履き替えた。
しかしそこから教室へはどうしても足が前に進まなかった。
僕はまずトイレに行き、荒くなった呼吸を整える。僕は意を決して、教室に入った。もうクラスメートは半数近く来ていて、各々おしゃべりをしていた。僕は自分の席に付いたが、動悸は治まるどころか、更にひどくなった。
そして今度は手足が痺れ始めた。手が僕の言う事を聞かない。瀬戸物のように固まってしまっている。このままでは死んでしまう。僕は最後の力でなんとか教室を出て、フラフラと保健室に向かった。
保健室に入り長椅子に座ると、なぜか動悸が治まり、手足の痺れも良くなった。
「はぁ。はぁ。」
目をつぶり、少しずつ呼吸を戻していった。五分ほどで通常の呼吸に戻り、手足の痺れも良くなった。そして僕は深く深呼吸した。
「死ぬかと思った。」深呼吸しながら、心の中でそう思う。
この壮絶な状態が毎日起こっていた。生と死の狭間を毎日漂うのだ。だから僕は学校に行きたくない。
でも勉強がしたくないわけではない。むしろ勉強がしたい。でも教室に入れないのだ。僕は毎日この矛盾の中で葛藤している。
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