『学校に行けない』

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「おはよう。」  保健室のドアが開き、保健の古谷先生が入ってきた。 古谷先生は僕の一番の理解者だった。歳は五十歳手前で、髪には白髪も混じっている。お母さん的存在だった。なかなか本当のお母さんには悩みを相談出来ない。心配かけたくないから。でも古谷先生には全てをさらけ出せた。 「教室に行ってみたの?」 「うん。入ったんだけど、やっぱ具合悪くなったよ。」 「そう。とりあえず横になって、ゆっくり休んだら。」  僕は頷き、学ランの上着を脱いでベッドに横になった。。緊張から解放されると、急に眠くなってきた。 夜、寝ていないせいもあるし、薬の副作用でもある。薬の副作用は眠気の他に、喉が異常に渇く。でも薬はやめられなかった。やめてしまえば、僕が僕ではなくなってしまう。 一度、飲み忘れて、寝てしまった事があった。その時、僕は目を覚ますと同時に、恐怖にも似た不安感に襲われた。そして訳もわからず涙が出て、どうしていいかわからなくなった。 それ以来どんな事があっても、薬は飲むようにしている。 僕が目を閉じると、学校のチャイムが鳴った。僕を置いて、いつもの学校が始まる。僕はベッドの毛布を頭まで被った。僕だけが取り残されている。クラスメートがどんどん遠くに行くような気がした。 「どうして僕だけがこんななんだろう?」 「どうして僕だけがこんな辛い思いをしなければならないのだろう?」 「どうして・・・?」僕は涙を我慢して、唇が切れそうなくらい下唇を噛んだ。
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