『学校に行けない』

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 「ミツル。結城先生が呼んでるよ。」  僕は古谷先生の声で目を覚ました。ポケットから携帯を取り出す。携帯の画面には十一時十三分の文字が出ていた。 僕は二時間以上寝ていたらしい。ゆっくりと上半身を起こしたけど、頭が重い。二、三度まばたきをした。そしてベッドから出て、学ランの上着を着た。 結城先生は僕の担任だった。毎日、結城先生の空き時間に面談をしている。僕は重い足取りで、進路相談室に行った。 軽くノックをして中に入ると、結城先生だけが座っていた。彼はまだ若い。教師になって三年目の若手教師だった。ワイシャツの上に黒のジャージを着ている。 「調子はどう?」 「あまり良くないっすね。」 「・・・」  結城先生は去年からクラスを受け持つようになったらしいが、僕みたいな生徒は初めてらしい。だいぶ困らせていて、迷惑をかけているようだ。結城先生が申し訳なさそうに話し出す。 「それで話なんだけど、君の出席日数についてなんだ。」 「はい。」 「いや君は学校には来ているから、学校の出席日数は大丈夫なんだけど、科目ごとの出席日数が危ないんだよ。」 「そうですか。」  最後に結城先生は僕の顔色をうかがうように話した。 「君には酷な事かもしれないけど、教室で授業を受けないと、留年って事にもなるよ。」  留年については僕も考えていた。このままでは危ないだろうなとは思っていた。でもなるべく考えないようにしていた事だった。 でも担任から留年の話が出るという事は、そろそろ本当に危ないのだろう。 この後、結城先生と軽く雑談すると、今日も授業に出れそうにないと早退を申し出た。先生はそれを了承して、今日の授業で使ったプリントや学級通信などを渡してくれた。 保健室に戻り、古谷先生に結城先生との話の内容を告げると、僕は学校を後にした。 帰り道、留年の事ばかり考えていた。僕はどうすればよいのだろう。留年という事は今のクラスメートが先輩になり、一個下の奴と同じになる。うちの中学からも何人か来るだろう。そいつらとクラスメートになるなんて。きっといい笑い者だな。でもそこまで僕は落ちぶれてない。空を見上げると、鳥が悠々と大空を舞っている。気持ち良さそうだ。あいつに悩みなどあるのだろうか。きっとない。なにも考えず、ただどこまでも飛んでいくのだろう。鳥に生まれてたら良かったな。そしたら今の悩みなどなかった・・・
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