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「それじゃあまずカバーで『どうしようもない恋の唄』。」
僕はイントロを弾き始めた。その軽快なリズムに乗せて、雅人が歌い始めた。
「♪あの娘はとても気まぐれで♪」
今日は僕達のバンド『キャッチャロー』の初ワンマンライブ。初なのに客入りは上々。ドラムの建治は縦乗りに上体を揺らし、全身で叩いている。ベースの圭吾も奴の性格を表すように、控えめにリズムを刻んでいた。ギターソロでスポットライトが僕を照らす。「まじ最高!すげぇ気持ちいい。」僕はどんな楽園よりも上の世界に居た。僕らは一時間半演奏したが、それは一瞬の出来事のようだった。
「今日はほんとありがと!またするからぜひ来てね。」
雅人のあいさつにお客さんから大喝采がおくられた。そして僕らはお客さんに一礼して、楽屋に戻った。
「まじ最高だね。」
楽屋の椅子に座った雅人はライブの興奮のまま口にした。楽屋と言ってもほんとせまいとこで、壁にはたくさんの落書きがしてある。僕の興奮も最高潮で、みんなに叫びに近い大声で言った。
「もっとオリジナル作って、もっと客呼ぼうよ。」
「だな。じゃあ今度はオールオリジナルで行くか?」
「いいね!」
雅人が答え、それに建治も圭吾も乗ってきた。僕ら4人は幸せの絶頂に居た。僕は、いやみんな「今死んでもいい」ぐらいの気持ちだろう。雅人がまた大声を出した。
「それじゃあ、ぱーっと打ち上げに行きますか!」
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