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「ねぇ!ねぇってば!」
僕は大きく体を揺らされ、目を覚ました。目を開けるといつものように裕美が居た。裕美は僕の彼女だ。僕らが付き合ったのが、僕がこっちに出てきてすぐだから、もう三年が経つ。五歳上の彼女を初めて見た時、まさか付き合うなんて思わなかったし、今では同棲しているのだから、おかしな話だ。
「ただいま。ご飯食べた?」
裕美がジャケットを脱ぎながら、そう言った。彼女は普通にOLをしている。もう帰って来たという事は、僕はかなりの時間寝ていたらしい。
「食べてない。」
痰をからませた低い声で答えると、裕美はまた質問してきた。
「あれ?今日バンドの練習はないの?」
「・・・あ!」
完全に忘れてた。携帯を見ると、六時四十分の表示が出た。六時からだから、すでに四十分もオーバーしている。着信履歴には真也からのが五件も入っている。
「ちょっと行って来る。」
僕は下だけジーンズに穿き替え、ギターケースだけ持って家を飛び出した。アパートの前に停めてある原チャに跨ると、フルスロットルにアクセルを回した。
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