二十二歳

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 スタジオに着き慌ててドアを開けると、ロビーにみんなの姿があった。 「おせぇよ。」 「まじごめん!」 「ギター居なきゃ練習になんないから。」  明らかにみんな不機嫌だった。僕はみんなそれぞれに手を合わせて謝った。 「ま、いいや。練習始めるか。」  真也は大人の対応をしてくれた。修二も斉藤も渋々納得してくれた。僕らはスタジオに入り、音だしを始めた。『ピース』は結成して三年目。僕にとっては二番目のバンド。東京に出てきて、すぐ結成した。それぞれ地元はバラバラだった。僕の最初のバンド『キャッチャロー』は初ワンマンの一年後、高校卒業と同時に解散した。あのメンバーで未だに音楽をしているのは僕だけ。ヴォーカルの雅人は就職し、高校の頃から付き合っていた彼女と結婚した。来年の頭にはパパになる。ドラムの建治は実家の建設会社を継ぐため、地元の大学で建築を学んでいるし、ベースの圭吾に至っては市の公務員をしている。解散して三年半、今はそれぞれがそれぞれの生活をしている。たまに雅人に電話するぐらいで、他の二人とは連絡すら取っていない。この『ピース』のメンバーも、修二以外は僕のように地元でバンドを解散して、こっちに出てきている。
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