二十二歳

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 今日はカラオケ屋のバイトが休みで、部屋でボーっとテレビを観ていた。先週のライブはまあまあうまくいった。客もけっこう入ったし、『上を向いて歩こう』のリミックスもだいぶうまくいった。今度は歌詞を英語にしてみることにした。十二月に入ると、なにかとまわりも慌しくなっている。街はクリスマスに向けてイリュミネーションに彩られていた。ちょうどワイドショーでクリスマス特集をしている。街行く女性に欲しいプレゼントを女のキャスターがインタビューしている。女達は笑いながら、ヴィトンやらエルメスやらグッチやらを言っている。似合いそうにない顔の奴も平気で、「プレゼントはやっぱ自分があげる金額の倍は欲しいよね。」などと言っている。 「まじうぜぇ。」  僕はテレビを消して、タバコを吸い始めた。 「なにあげようかな。」  ぼそっとひとり言を言い、深い溜め息をついた。月収十万の僕が買えるのはせいぜい一万が限度。ブランド物には程遠い。去年は今より更にお金がなく、お揃いの茶碗とマグカップにした。それでも裕美はかなり喜んでくれた。彼女はジャケットをくれたが、どう見てもそれの方が高かった。「情けねぇな。」今年のプレゼントをいろいろ考えた結果、たどりついた答えはそれだった。夕方、裕美がいつものように仕事から帰って来た。二人でご飯を食べる。おかずに箸をつけながら、裕美が話してきた。
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