二十二歳

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「あ、そうそう。今週の日曜、地元の友達の結婚式だから、実家帰るね。」 「そうなんだ。同級生?」 「うん。高校のだよ。私より早く結婚するとは思わなかったよ。」  裕美は何気なく発した言葉だっただろう。でも僕には引っ掛かった。 「なにそれ。俺ら結婚出来ないから嫌味?」 「なんで、そういう風にとらえるの?」  食卓の雰囲気が一気に悪くなった。常に裕美との結婚については考えている。二十七歳の裕美は今が結婚適齢期と呼ばれるぐらいだろう。周りも結婚してきているし、裕美自身も結婚したいと思っているかもしれない。もちろんこいつとは結婚したい。でも養うほどの財力は今の僕にはないし、かと言って夢を諦めたくもない。それが僕の中で、自分への苛立ちになっている。 「どうせ、俺金ねぇし、これからもどうなるかわかんねぇよ。」  なのに素直にその気持ちは言えず、こんなこと言ってしまった。 「どうしてそうなるの?私結婚してなんて一言も言ってないじゃん。」 「・・・」  僕は黙って、ご飯を食べ続けた。すると裕美が泣き出した。 「これからどうなるかわからないって私達のこと?」 「そうじゃねぇよ。」 「孝は私と今すぐとは言わないけど、結婚は全然考えてないの?」 「そんなことねぇよ。俺はお前と一緒に居たいよ。ただそれだけじゃダメなんじゃないの?」 「それ以上になにがあるの?」  更に裕美が泣き出した。僕は裕美の「それ以上なにがある?」という言葉が胸に刺さった。そこでやっと冷静になった。しばらくして僕が言った。 「・・・・・・ごめん。なんていうか俺、自分自身にイラついてたというか、やっぱ俺ダメなんじゃねぇかなとか思っちゃっててさ。お前にあたっちゃった。まじごめん。」  僕はそう言うとティッシュを裕美に渡した。それでも裕美はなかなか泣き止んでくれなかった。 「もう泣くなよ。俺なにしたらいい?」 「・・・好きって言ったらいいよ。」 「は?やだよ。」 「じゃあ許さない。」 「・・・・・・好きだよ。」  言ってかなり照れくさかった。なぜか心臓がドキドキしているし。裕美は顔を上げて、にこっと笑ってくれた。僕はこの笑顔が世界のどんな物より好きだ。
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