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この殺風景を
何度みてきたのだろうか
現に今も、目にしている
新世界大戦が残した余韻とも言える、無惨な痕跡…
戦禍の渦に巻き込まれ、痛みと苦しみに喘いでいた数多の人民の悲痛な叫びは
僅か0.02秒経たぬうちに掻き消され、
黄緑を原色とする壮大な野原は高温を纏った炎に制圧され、跡形もなく焼けただれた。
草花、樹木だけではない。
罪などとは縁のない、名も知れぬ数多の人種も
敵に忠誠を誓うが如く、
その小さな灯-いのち-を散らしていった。
「「ぐわぁぁぁっ!!」」
声にならない苦痛の念が空を茜色に染め上げる。
相手に届かぬまま、宙に昇る。
それは、
今の私には、分からない。
ただ
薄く透き通った蒼い翼を背中に生やし
光の種子・天使の構成物質であるマナをまき散らしながら宙を駆け巡り、
紅に染められた澱んだ世界に
栄光を取り戻したいと切に願い続ける
『契約者』のためだけに
命を捧げ、
捨て身で敵に立ち向かう日々を送っている…
それだけの為に
与えられた永遠の命。
私は、クラトス。
絶対天使
フランヴェルジュのクラトス…
…そう呼ばれている。
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