プロローグ

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   例えばな、例えばの話。  自分に置き換えて想像してみてくれ。  自分の先祖が起こした大惨事が原因で、一族全員が長きに渡り世間から嫌われてしまったのなら、これは、なかなか辛いものがあるわけだ。  少年A個人が良い奴か悪い奴か、なんて関係の無いこと。「あの大悪党の血筋」という時点で、少年Aはもうアウトなのである。  ちなみに、少年Aとはもちろん俺のことだ。  実は例えバナシじゃなく俺の随筆なのでした。  まあ聞いてくれよ。  俺は物心付いた頃から、えらくみんなに嫌われていた。どれくらい嫌われていたかと言うと、両親が処刑されるほどにだ。いきなり暗い話ですまん。  それで毛も生えないうちに天涯孤独まで追い込まれたわけだが、とある魔導師の爺さんに助けてもらって俺の寿命は延長された。  その頃になると、俺がまず憎んだのは、俺の血筋に呪いを残しやがった先祖。  先祖っつーか祖父である。その頭のいかれてる祖父は、幾つもある異世界に14体存在するとされる「魔王」の一体を召還し、当時、王国の大都市を壊滅させると、自身も魔王によって殺されるという、迷惑極まりない惨事を巻き起こした。  まったく。なんつーことをしてくれたんだ……。大罪者の血筋を引いていただけで、俺は両親を殺され、魔導師に拾われてからも素性をひた隠す肩身の狭い思い続けることとなった。よって、俺は祖父を真っ先に憎んだ。  次に憎んだのは自分。ちょっと成長して、哲学が芽生えたのかもしれん。世間から隠れて暮らす俺の人生は退屈で、悲しい。とにかく不幸。あんな祖父の孫に生まれてしまった自己を呪ってみたが、しかし、どうにも性に合わず、この思想は長く続かなかった。  だって俺は悪くねーし。なんだかんだ俺は自分が好きですから。  
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