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――んで、最終的に怨嗟の対象になったのは、世間。
つまり俺の住む「第三世界」そのものである。
きっかけは18歳の時、俺の人生の大半を面倒見てくれた、育ての親と言って良い、魔導師の爺さんまでもが殺されたことだ。
俺のせいだが、俺のせいじゃない。
俺の出生を嗅ぎ付けた何者か――十中八九王国の秘密警団だろうが、ある晩、ソイツらが家へやってきて……たまたま応接に当たった、既に老後を迎えた養父を、無情にも手にかけた。
その時、二階に居た俺を、爺さんの最後の声が助けてくれることとなる。
逃げろっ! ――と。
ああ、無我夢中で逃げたとも。
そうして――呪った。
何故、そこまでする必要がある?
魔王を呼び出した祖父は確かに悪党だった。しかし、俺の両親や、ましてあの気の良い老魔導師が悪党だったってことは断じてない。
世間ってのは陰湿で、残酷。俺の家族や恩人を殺した連中は、俺の祖父がやったことと何が違うというのだ。
頭にくる。本気で。
それから俺は再び隠遁し、魔導師に教えてもらった知識を独学で研鑽すること5年。
ある決心をした。
「よし、俺も魔王を呼び出そう」
ここまで世間に嫌われちまったら、もう善人路線で生きていくのは無理だ。
だったら、俺も祖父と同じことをやってみる。
見てろよ世界。とっちめてやる。って考えた。
だからと言って、祖父とまったく同じ轍を踏むつもりはない。
魔王を召還して、そのあとなんとか魔王を上手く運用し、この頭に来る世界を征服してみせるのだ。
その暁に、少しは俺に優しい世界になってくれるように。
両親や魔導師の爺さんの墓も作ってやらないと。
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