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クラスの女の子に呼ばれて振り返る。
「はい?」
冷たい視線を嘘のように消す。
「さっきね、香坂先生が探してたけど…」
「あ、今会いました。
わざわざありがとうございます~」
亜芽は、ゆるりと頭を下げる。
それを見て多少うろたえる女の子。
「…あれ?亜芽ちゃんその紙なに~?」
亜芽が片手に持つ書類を指さす。
あぁ、そうだコレ届けなきゃいけなかったんだ…
ふっと忘れてた書類の存在を思い出した。
チッ、と舌打ちをする。
もちろん心の中で。
「これはですね、先程香坂先生に頼まれまして」
「へ~、誰に渡すの?」
通りすがりの背の高い男子が割り込む。
「ちょっと!今あたしが亜芽ちゃんと話してんの!!」
「いいだろ別に。
で、誰なの?よかったら俺が渡そうか」
デレデレとした顔で亜芽に話しかける男子。
「ホント?じゃあ…お願いしてもいいですか?」
……ラッキ。
男子に書類の束を渡す。
「もちろん。誰?」
にっこり微笑む。
「時塔 銀さんです」
バサ…
書類が男子の手から消える。
風にヒラヒラと舞う紙。
力なく地面に落ちる。
「「…時塔…!?」」
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