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その言葉に、廊下を行く人達が振り返る。
「…時塔 銀…?!」
「それって、あの!?」
ザワザワと耳障りな雑音が広がる。
書類を落とした男がガタガタと震えている。
「ご、ごごごごゴメン亜芽ちゃん!!
俺、用事思い出したから!!」
男はこけそうになりながら走り去る。
……な……?
「あ、亜芽ちゃん!
ああああたしもちょっと……ッまたね!」
クラスの女の子も、男につづく。
「あら、どうしたのかしら…?」
何事もなかったように、落ちた書類を手際よく拾う。
亜芽に廊下中の視線が集まっている。
「…………」
居心地…悪い。
拾った書類を片腕で抱えると、くるりと踵をかえした。
そしてゆっくり、視線の方へ顔だけ向ける。
「…みなさん、ではまた…」
浅くお辞儀をして、笑顔でその場をあとにした。
…使えないわね。
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