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ママの声がした。
『そうだ、ママに聞こう。』
不安に駆られるのび太、じっとしてはいられなかった。
ただ、妙な不安だけが募る。
『ママ、ドラえもんはどこへ行ったの?』
のび太が聞く。
『・・・のびちゃん?どうしたの?ドラえもんって何?』
血の気が引く。
のび太にはママの言っている意味がわからない。
『ドラえもんだよ、ドラえもん。いつもいるじゃない。どうしちゃったの、ママ? 』
『のびちゃん、そんな冗談はママ嫌いです。早くご飯を食べなさい。』
のび太は愕然としている
『そんなはずはない。』
のび太は家を飛び出した。
のび太はしずかちゃんの家に行った。
もしかしたらドラえもんがいるかもしれない、そう思ったのだ。
『ドラえもん来てない?』
しずかちゃんに聞いた。
『何それ?ドラえもんって何かしら?』
話にならない。
スネ夫の家に行く。
ジャイアンの家に行く。
『ドラえもん来てない?』
『ドラえもん来てない?』
のび太は至る所を探した。
公園、学校、商店街・・・。
だが、誰ひとりとしてドラえもんのことを知らない。
どら焼き屋さんさえ知らない。
のび太は泣きながら家へ帰った。
のび太はご飯も食べずに、部屋で一人になっていた。
『誰もドラえもんのことを知らない。』
ただ、それだけが気になって仕方がない。>みんなドラえもんのことを忘れたのだろうか。
それとも、自分が幻覚を見ていたのだろうか。
もしかすると、別の世界に来たのかもしれない。
色々な考えが浮かぶ。
『そうだ、机の引き出しを見ればいいんだ。』
そこにはタイムマシンがある。 思えば全てはここから始まった。
ドラえもんはここから現れたのだ。
この引き出しを開けると全てがわかる。
>のび太は引き出しに手をかけた。
そして、引き出しを一気に引く。
・・・・・。
引き出しの中には本が詰まっていた。
タイムマシンなんてものは無い。
のび太の望むものは何ひとつなかった。
ピッピッピッピッピッピ。
静かな空間にデジタル音が鳴り響く。
電子機器の音である。
真白な風景。白いカーテンからもれる光。
そして、それを照らす白い壁。
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