星野

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    「でさ、何で落ちてきたの?」   部屋でジュースを飲みながら、あたしは星野に訊ねた。驚くことに、星野もジュースを飲んでいる。   「うーん」 星野は顔を曇らせた。 「たぶん……光れなくなったからだと思います」   「光れない?」   「はい……」   「どうして?」   「………」     星野の話はこうだった。   なんでも、星野はその昔、星のなかの星として、人々に崇められていたらしい。旅人は星野の光を頼りにし、こどもたちは空を見上げては星野にお祈りをしていたそうだ。   けれど、年月が経つにつれ、星野を見上げる人は少なくなった。   「寂しかったんですよね」 星野が言う。 「だからぼく、みんなに振り向いてもらおうと、一生懸命光ったんです。でも……」   「でも?」   「ダメでした。みんな、下を向いてばかりで」   確かに。あたしも、空を眺めることなんて、滅多にない。    
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