星野

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「それでもぼくは、一生懸命光り続けたんです。昨日よりも今日、今日よりも明日、もっと明るくなれるように。そうしたら今日……」   星野はうつむいた。   「突然、心の中でポキッと何かが折れたんです。そして……光れなくなりました」     あたしは黙っていた。   なぜだろう。その気持ち、すごく分かる気がする。どうして分かるのかは、分からないけれど。でも、そういう気持ちになることって、ある、よね。   「なんだか、しんみりしちゃいましたね」   お前が言うな。   「そうそう、さっきから気になっていたんですが、それ、何ですか?」   「え?」   星野は、あたしの鞄から飛び出しているリコーダーを指差した。いや、角差した。   「ああ、これ?」 あたしはリコーダーを取り出す。 「楽器よ。リコーダーっていうの」   「わぁ、のぞみさん、演奏出来るんですか?」   「出来ないことはないけど」   嫌な予感。   「じゃあ、1曲演奏してみて下さいよ」   やっぱり。    
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