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そのまさかだった。
あたしの手のなかにいるのは、顔の付いた立派な漬物石……じゃなかった、お星さまだった。
手足は、無い。きっと、顔から出ている5つの角のどれかが、手であり、足なんだろう。
お星さまとあたしは、しばらく見つめ合った。なんだか、気まずい。
「こんにちは」
とりあえずあたしは挨拶した。やっぱり、基本だし。すると、お星さまは全身(?)をピンと伸ばして、
「こ……こ……こんにちは!」
と言った。後から今は「こんばんは」の時間だと気が付いたけれど、そんなこと、目の前の事実に比べればどうってことない。
「あなた、何者?」
あたしは訊ねた。ここは、はっきりさせておかないと。
「星です」
期待どおりの答え。
「あなたは?」
「……のぞみ」
一瞬、「人間です」って答えようかと思った。けれど、馬鹿にしているとも思われたくなかったから、やめた。
「素敵な名前ですね」
お星さまが笑った。
「ぼくは、ほ……と言います」
「え?何?」
よく聞こえなかった。
「ほしの、です」
「………」
「ほしのって言うんですよ。聞こえてますか?」
「ほしの……『星の王子さま』とかでなく?」
「星野です。お星さまの『星』に、野原の『野』」
あたしは、固まった。きっと、石よりも固かったと思う。
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