バリュー

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「信用に欠けるなぁ。名前からしても……ちょっとね」 カナエは怪訝そうな顔でこちらに微笑んだ。もちろん、彼女はその名前に対して微笑んでいるのだと思われる。 「でもさ、実力はあるんだよ。ほら、テレビでもやってたしね」 私はとっさに占い師をフォローした。必至にね。まあ、後から思えばこれは確実に無駄なフォローだったんだけどね。 するとカナエは「うーん」と、腕組みをして首を傾げはじめた。「大丈夫かな?」 「いやいや、とにかくすごいんだよ、彼はさ。名前はちょっとあれだけど」最後は弱々しく。気を取り直して「とにかくまずは中に入ろう。がっかりするようだったらひやかしだけで帰ればいいしさ」 互いに同意し、私達はいよいよ『未来ウオッチャーTAKU』の看板をくぐり、店内へと足を踏み入れることにした。そして驚愕した。なんと店内の様子の凄まじさが、私達の心配事を全て吹き飛ばしてしまったのだ。 簡潔に言うなれば、店内は白一色で覆われていた。そこはまるで雪国にでもやってきたかのようで、壁紙やら様々な道具やら、本当に全てが真っ白だ。しかし、それは純粋なイメージというよりは、どちらかといえば殺伐としている、そういった方が正しく感じられる気がした。 そんな殺伐とした白い部屋を目にした私達は、一瞬まばたきというものを忘れてしまった。目を見開き、硬直した。しかし数秒経つとハッと目を覚まし、今までの分を補うようにまばたきを十回連続で行なった。
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