ステージ

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僕は古びた木製の椅子に腰掛け、片手には本を一冊持っている。愛読書であるサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を読んでいる。やれやれ、この本もそろそろ読み飽きてきたなと思いながらも、僕は読むのをやめはしない。 耳を澄ませば音楽が聞こえてくる。買ったばかりのCDプレーヤーのスピーカーから、BUMP OF CHICKENの曲が絶え間なく流れている。しかし、やはり本を読みながら音楽を聴くというのはなかなか難しいため、僕はプレーヤーの音量を五つほど下げる。今はとりあえず本を読むことだけに集中する。 僕はおよそ一分かけて一ページを読みきる。一度読んだ本であろうと読む時間に変化はない。僕は必ず一分間はそのページに目を通し続ける。ゆえにこの小説を全て読み終えてしまう頃には、すっかり日が暮れて、部活帰りの学生が街を往来していることだろう。それでも僕は本を読み続ける。読み終えるまで決して立ち上がりはしない。 やがて一時間ほど経つと、コンコンというノックの音が僕の耳を刺激する。CDプレーヤーはすでに全曲を再生し終え、その役目を終了していた。電源のランプのみが点り、溢れだしていた曲はどこかへ消え去っている。 ノックの音は無視して、僕は本を読み続けることにする。 ノックの音は強くなっていく。
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