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私は愛想笑いで軽くあしらい、話を前に進めることだけに専念した。全てはここへやってきた用事を済ませるためにある。
「とにかく、そんな話よりまずは私達を占ってみてよ。なんてったって今日はそのために来たんだからね。ねえ、TAKUさん」
「すみませんが、私のことはナカヤマとお呼び下さい」
「ナカヤマ?」
「ええ。下の名前で呼ばれるのに慣れていないものでね」
「店の看板にはあんなに堂々と『TAKU』と書いてあるのに?」
「ええ」
やれやれ。
私は小さくため息をつき、カナエと共に前と進んでいった。テーブルの前まで行くとそこにあった椅子に座り、早速占ってもらうことにした。
「ところで」カナエが口を開いた。「ナカヤマさんは何占い師なの?」
私もそれについては気になった。彼をテレビで見たときは手相を見たり、変な水晶を見たり、あるいはタロットカードを扱うということはなく、彼はただ未来を言い当ててみせたのだった。まさしく『未来ウオッチャーTAKU』の名如く、未来を覗くようにして私達視聴者を驚かせた。だから、彼が専門として何占い師なのかは謎であった。
ナカヤマことTAKUは恐る恐る口を開いた。わざわざ恐る恐る口を開く必要はないのだが、彼は意味なくそのように動作した。
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