バリュー

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「私は特にこれといった分野を持ち合わせてはいません」 「と言うと?」カナエはより具体的な答えを求めている。 「一般的に占い師といっても様々です。それはご存じですよね。あなた方がすぐ頭に思い浮かぶものは、手相占いであったりタロット占いだったりすることでしょう。他にも占星術や、最近ではスピリチュアル的なものまで有名になっています」 ふむふむ。私はやや面倒臭そうに聞いている。カナエは興味深そうに聞いている。ナカヤマは話を続けた。 「しかし、私はそんな『くだらない占い』なんかに頼ってなどいません。だってそうでしょう。たとえどんな占いであっても、所詮それは占いでしかない。ゆえに外れることもある。いや、外れることの方がほとんどだ」 「ん?」私は首を傾げた。そして彼に訊いた。「でもあなたも占い師なんでしょう。だったらあなた自身も、占いが外れちゃうことだってあるんじゃないの?」 それを聞いたナカヤマはうっすらと笑みを浮かべた。「まさしく、それこそが重要なポイントなのです」 ナカヤマは前で手を組み、私達の目をジロリと覗きこんできた。それはいたって普通の所作であったが、彼が行うとずいぶん魅力的に感じられた。彼は再び話しはじめた。
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