ステージ

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僕は自分が出来る精一杯の愛想笑いで「何の用だい?」と彼に尋ねる。 するとカズキはいかにも「やれやれ」といった感じのジェスチャーで、自らの膝をポンと叩き立ち上がった。 「どうやらお前は友情だとか、チームワークだとかいう言葉を知らないらしい」と彼は言う。そして徐々に興奮していく。「どうしてお前は体育祭や文化祭の日に限って学校をサボるんだよ。今日は何の日だ、言ってみろ!」 今日が何の日か、もちろん僕は知っている。僕はひるむことなく、彼にそれを告げる。 「たしか、合唱コンクールだね。高校生活最後の年だから、みんなやる気満々だ」 「そう、お前以外はな」と、彼は付け加える。 僕はこれまでに学校の行事に参加したことは、一度としてないのだ。練習にだって参加したことはない。断っておくが、僕は不良少年で学校をよくサボるとか、巷で流行りの引きこもりってわけじゃない。行事のある日にだけ欠席する。それだけだ。 行事のある日だけ欠席しても、もちろん単位足らずで留年することはない。僕はそれ以外の日は皆勤だから。先生から行事に参加するように言われたこともあるが、僕は拒み続けてきた。そして今も拒み続けている。だんだんと僕が行事の場にいないことが普通になっていった。
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