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「ところでカズキ、君は何しにここへ来たんだ?まさか君もサボる気なのかい」
カズキがサボるはずがない。彼はクラスのリーダー格でみんなを引っ張っているのだから。そんなことは分かっていながら、僕は冗談半分で聞いてみたのだ。あえて言うならば、「悪気はなかった」。しかしこの言葉を引き金に、場は僕の想像以上に白熱していった。もちろんカズキ一人でね。
「俺はお前を呼びに戻ってきたんだ」
始めは優しく、穏やかに。
「あと数ヶ月で俺達も卒業だぜ。なあ今回は最後の行事なんだ。クラスの連中も待ってる」
所々を強調し、やや感情的に。
「さあ、行くぞ。本なんか帰ってから読め。寮から学校までなんかすぐに着く。今ならまだ間に合う」
まるで映画のように、まるでオペラのように。
僕は国会議員さながらのカズキの演説の迫力に飽きれ果て、何も言うことが出来なかった。そして彼はそんな僕の反応を勘違いして受け取った。
「目が覚めたか?よし、さっさと着替えろ。運が良いことに俺達が歌うのは昼からだ。今はもう昼食どきだから、なんなら昼飯食べてから行くか」
僕は時計を見る。二つの針はまっすぐに上を指している。
カズキは制服を持ってくる。勝手にハンガーに掛かっていた服を取り、僕に手渡す。
僕は深いため息をつく。
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