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十秒後、彼はいよいよ扉を閉めて、部屋の外へと出ていった。ここへ来たときと同じように、多少の憤りを感じさせながら。
ガチャッという、扉が閉まる音を最後に、この部屋は必然的に沈黙の巣となる。僕は少しだけ切なくなる。
『唯一』の友人を失ってしまったかもしれないと、僕は瞬間的な絶望感に苛まれる。切なさはさらに加速していく。
空虚さに押し潰されそうになる。だからまた音楽を聴くことにする。CDプレーヤーに入ったままのBUMP OF CHICKENの曲を、一曲目から再生する。
「Stage Of The Ground」
彼らのメジャーファーストアルバム「Jupiter」、僕はこのCDをすでに百回以上は聴いていると思う。冗談抜きで。
再び本を手に取る。
「ライ麦畑でつかまえて」
本を読むのには、やはりプレーヤーの音量が大きすぎるように感じた。だから音量を下げる。先程五つ下げたのに加え、さらに二つ音量を下げる。すると、僕はようやく落ち着きを取り戻す。いろんな意味で。
格好だけは黙々と本を読む読書家。優雅に音楽を聴きながら。しかし、心はすでにそこには存在していなかった。
僕は、カズキがこの部屋を出ていく前に言った言葉を、頭の中で復唱する。
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