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火のはぜる音と舞い上がる火の粉が、暗闇の中で生き生きと存在を主張する。
上を見上げれば、見たこともない星の数々がしんしんと雪のように降り注ぎそうな程、圧倒的な美しい夜空。遠くから聞こえてくるフクロウと珍しい鳥の鳴き声が、美しすぎるこの夜の草原と相まって、原始的な闇の静けさと闇に潜む何かを感じて不安を覚える。
ライナとユアは、炎の加護と闇の領域の狭間辺りで、自分たちの置かれている現実と、昼に再会した男がもたらした事、嫌なことを全て忘れて暫し見入っていたが、流石に怖くなって人々が囲む焚火の元へ戻ると、ダリオンからよく焼けた肉が刺さった串を受け取る。
「それにしても、にぃちゃん達、人間にうまく化けてるなぁ。全くどこから見ても人間だぜぃ」
ダリオンは酒を片手に二人の側に座る。
「は?」
思わずユアとライナは言った。
「本当に純潔エルフ共には腹が立つぜ! なぁ!」
ダリオンが大声で言うと賊達は声をそろえ、大声で同意を示す。
「人間の血が入ってる! エルフらしい容姿ではない! 魔法が使えない! ちくしょうぉ! 人間の血が入っていて、人間好きで何が悪いってんだぁ~!! 純潔エルフなぞ、滅びちまえぇ~!!」
叫びまくるダリオンの姿に呆然としながら、ライナ達は何が何だか分からずに戸惑っていると小男ブッシは3人に耳打ちする。
「ボスは人間好きで、奥さんは人間の血が濃い娘さんだからねぇ~。なおさらエルフ嫌いなんでぇ。にぃちゃん達を見てたらホームシックになったんだねぇ」
アゼルのメンバーには純潔のエルフは一人もいない。皆、人間の血を引き、エルフよりも人間が好きな者達のようだ。
「所で、例の件なのだが…」
銀髪と緑かかった金色の瞳を持つ男が、ダリオンに酒を注ぎながら聞く。
「おう、分かってるぜ! カインて言う灰色の髪と赤い目を持つにぃちゃんの保護だろ? このセフィロト一の、正義の味方、義賊アゼルに任せておけッ!」
すっかり今日会ったばかりの男、ウルフに気を許したダリオンは力強く頷くと、上機嫌で仲間と大合唱を始めた。
「やぁ、君達久しぶりだね」
そう言ったウルフの金色の瞳が、ライナとユアを見て妖しく輝く。
年齢も実力も二人より上であるウルフに少しでも抵抗しようと睨み返した。
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