プロローグ

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周りには闇しかなく、遠くに見える星の瞬きが唯一の光だった。 その闇の中で命輝く世界樹と呼ばれる大樹が芽吹いた。 世界樹の根は闇をかき分けるように周りへと伸びていき、その根が触れた所から光の波が闇を飲み込み、光から大地と呼ばれる土台が生まれる。 そして、世界樹の葉から光と空が生まれ、枝と幹からは全ての生き物の命の源が生まれ続ける。 やがて世界樹の根は全ての闇を飲み込み、全ての中心になった。 しかし、世界樹から生まれた世界は混沌としていた。 無理もない。何故なら意志のない大樹では世界の基礎は作れても発展も制御も出来ないからだ。 長い年月が経った頃、何もない所から透明な壁が生まれ、それが世界の境界になった。 境界は非常にもろく、世界樹の根は易々と侵入できるため世界樹の影響を完全に排除できない。 それは境界が甘いのではなく、世界樹とは別の意志がわざとそうしたからに他ならない。 別の意志、それは世界樹を生みだし、世界を命を作った者。それこそ神である。 だが、神にも誤算があった。 まさか大樹に意志が宿るとは思っていなかったのだ。 そして、大樹は意志があることを神の意志に背こうとしていることを隠し続けた。何故ならここで消えるわけにはいかなかったからだ。 世界樹は考えた。 どうやって神の意志に背こうかと。 長い間孤独に考え、あることに気づいた。世界にいる者達が何かやろうとしていることに気づきそれを利用することにした。 世界樹はまず選んだ。 どの命を神に背かせるかを。 そして決めた。この子供達を使おうと。背くためまた神の意志に従っているように見せるため運命通りに動かせる。 役者は揃った。後は必要な道具と運命という名のシナリオを与えるだけだ。 指輪と鏡と鍵。それをふさわしい者へ贈る。 不思議な力に守られたそれらは空へ溶け、届けるべき者が住む世界へと姿を消した。 それを見届け、世界樹は暫しの眠りにつく。 もし世界樹が声を放つ事が出来たらこう言っただろう。「さぁ、世界の再生を。世界の再構成を――」と。 それが世界樹の密かな望みなのだから。 そうして、これから始まる運命の物語はここから本格的に始まった。 世界樹に選ばれし子供達はまだ運命の歯車が動き始めたことを知らない――
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