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朝日を浴びて山々が美しく輝いて見える。空も澄んで綺麗だ。
「じゃぁな、にぃちゃん達!」
ダリオンとその仲間の賊達は手を振りながら見送る。
ダリオン達に礼を言って、3人は『アテナ』まで歩く。
しばらく歩くと、アテナの出入り口である門の前まできた。
「…いつまでついてくる気ですか?」
ユアは微笑みながら言った。
「さぁな?」
ウルフは表情を変えずに言う。この男が何を考えてるのか分からないと、ユアとライナはウルフに隙を見せないように気をつける。
「はっきりさせるべきじゃねぇ?」
ライナはユアに言った。アテナに入る前に確認出来る事はすべきだと判断したのだ。
ユアはライナの意図に気づいてウルフに強い口調で聞いた。
「私達が気づいた矛盾は、あなたとフィンの言っていた事です。あなたはあの時、『契約石はお互い5個ずつ持っている』と言いましたが、フィンは9個奪われたと言ってましたよ。その矛盾はどう説明しますか?」
ユアはユグドラシルで気づいた矛盾を指摘した。
フィンは聖域を守る守護者の女で、ヴォーストに捕まった敵の1人だ。守護者とヴォーストは世界樹の契約石の争奪戦をしていた。
「守護者が嘘を言っているとは考えないのか?」
ウルフは面白がるように言う。
「私達にとってヴォーストも守護者も敵です。どちらの言葉も信じません」
きっぱりとユアが言い放つ。
「それにお前ら、世界樹に何したんだ?」
ライナはウルフは世界樹に向けて槍のような物を投げていたのを見ている。
槍が世界樹に刺さった時に異変があったのだ。
「さぁな」
ウルフは結局答えずに、さっさとアテナに入って行ってしまった。
「…逃げられたな」
ライナは帽子と両腕につけたブレスレットを直す。
「仕方がありません。一緒に行動しましょう」
ユアは不快そうな様子でウルフの背中を見る。
互いに見知らぬ地。行動を共にした方が何かと都合が良い。
上手くすればウルフの狙いが分かるかも知れないからだ。
「疲れそうだな」
ライナはため息をついた。
「これは凄いですね」
ユアはアテナの街並みを見回しながら素直な感想をのべる。
街は道はレンガ畳で舗装され、家々は景観を守るように綺麗に建っている。エデンのどの国よりも美しく整備された姿ははまるで街全体が芸術作品のようですらある。
街の奥の方には大きな木が見えた。
「きゃふ」
よそ見したライナに何かがぶつかった。
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