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「ごめん」
流石にライナは慌てて屈む。
ライナにぶつかったのは耳の尖った可愛らしい女の子だった。
栗色のくせっ毛と赤みかがった茶色の瞳が似合う。
「ごめんなさい。前を見てなかったのです~」
女の子はペコペコ、ライナに頭を下げて謝る。
「気にするなって」
ライナは苦笑を浮かべて言った。
その時、女の子が持っていた紙袋の荷物の中身が転げ落ちた。ライナはそれを拾って渡す。
「僕のせいですみません。ありがとうなのです」
また頭を下げた。
「…今、僕って言った?」
ライナは躊躇いがちに聞く。
「僕は男です」
胸を張って女の子、正確には男の子が言った。
後ろではユアが笑っている。
「小さいのに頑張ってるな」
ライナはまだ笑っているユアに怒りをぶつけたいのをこらえて言った。
「僕はこう見えても25なのです」
男の子は抗議した。
「え!?」
「は!?」
ライナとユアは驚く。
あのウルフでさえ驚きをあらわにする程の驚きだ。
「そうだ! お礼にお茶をご馳走しますのです」
男の子に見える男は3人をお茶に誘った。
「凄いですね…」
馬車で移動した3人は大きく立派な家の前で立ち止まる。
男の名はサム。アテナに住んでいるエルっても驚かないと心の中で誓う。
「今は客人がいますが、大丈夫なのですよ」
サムは家の中へ3人を誘う。
サムはトレイに乗せた紅茶のカップを3人の前に置く。
「どうぞ」
サムはそう言ってから部屋を出て行く。
それを確認したライナとユアはウルフに確認する。
「この世界は知らないんだな?」
「私も始めてきた。これで最低でも、世界は4つだと分かった」
ウルフは紅茶を飲みながらライナの質問に答えた。
「どうやってあなたはこの世界にきたのですか?」
今度はユアが聞く。
「私は呼ばれてきただけだ。そう言う君達はどうなんだ?」
今度はウルフが聞いてきた。
「鏡の中に引きずりこまれたんだよ」
ライナは不服そうに言って紅茶を一気に飲み干した。
「お待たせなのです」
サムは誰かの手を引いて部屋に入ってきた。
「あ…」
ライナとユアは驚かないと誓っても驚いてしまった。
サムに連れられて入ってきたのはアリスだった。
アリスもライナとユアの姿を見て、信じられないとばかりに驚いている。次第にアリスは泣き出し、ライナの胸に思いっきり飛びこんだ。
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