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あまりの勢いに息を詰まりながらもライナはアリスの背中を撫でる。
「まさかアリスに会うとは思いませんでしたね」
ユアは呆れたような関心したような不思議な表情でソファーの背にもたれかかる。
「ライナ。ねぇさんが…」
アリスはそう言ってライナに泣きついた。
「アリス、ミアがどうかしましたか?」
ユアはアリスのただならぬ様子を見て事情を聞いた。
アリスとミアは双子の姉妹でユグドラシルで出会った仲間だった。エデンに戻る時は別行動をしていたため、アリス達がどうなったかライナとユアは知らなかった。
「ねぇさんが1週間前から行方不明なの。私、心配で探し回ったら、カバック山の湖に落ちちゃって、気づいたらアテナの門の前に倒れてたの…」
アリス達は故郷のオータスに戻り、休養をしていたらしい。ミアは先の戦いで深手を負っていたため、行方不明になった日までベッドから動かなかったようだ。
「ケガ人が歩き回れると思いませんが、確かに心配ですね」
ユアは表情を変えずに淡々と言った。
ユアは昔から他人への興味が薄いから仕方がないが、ライナから見れば、ユアが少しでもミアの心配をしているのが分かる。
「…お前って不器用だよな」
ライナがそう言うとユアは鈍感よりもマシだと言い返した。
ライナ達のやり取りを見ていたサムはどうしたら良いのか迷っていたが、意を決し声をかけた。
「あの、アリスさん。僕に事情を説明して欲しいのです」
「ご、ごめんなさい」
アリスは慌てて涙を袖で拭い、ライナから離れた。
「あのね、えっと…」
アリスは言葉を選ぶように、何から説明すべきかと考えてた。
「サムさんには私が異世界からきた事を説明したから、後は任せる」
アリスの結論はユアとライナに任せる事だった。
「え? って事は皆さん異世界からきたのですね!?」
サムは小さな体を興奮で揺らしながら立ち上がった。
「そうです」
ユアがあっさりと言った。
「ほ、本当なのですか!? すごいです!」
サムは好奇心でまん丸の大きな目を輝かせながら言った。この様子を見る限り、当分止まりそうにない。
「バラして良いのかよ」
ライナはユアに耳打ちする。
「仕方がありません。こうなったら彼には協力者になってもらいましょう」
ユアは天使の微笑みと言えるほどの表情で言った。ユアの笑顔の裏には何が隠れているのか察したライナは黙った。
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