プロローグ

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††† 懐かしい女の声に呼ばれている夢を見た……。 『天空にそびえる美しい女神が守る大地、そこは楽園と呼べる美しい理想郷 かつて人はそこに住んでいたが、神の怒りに触れ楽園を去ったのだ いつか神の許しが得られれば女神が迎えに降臨する そして、選ばれた者だけが行くことの出来る楽園へと女神が誘(いざな)うだろう』 「こんな言い伝えがあったんだな」 ライナは隣にいるユアが持っている書物を覗き見る。 「『天空都市』について詳しく書いてあるのは、ありませんね」 ユアは本を閉じてライナが持つバックに本人の許可無く入れる。そんな彼の名は、赤い髪の青年がライナ。金髪の青年がユアと言うまだ18才のコンビである。 何故、彼らはこの書物を頭をつき合わせて見ているかと言えば、この書物がだいぶ昔に絶版し、印刷数も少なく、それ故、変な本も多く扱っているミスト区の大図書館にしか置いてなかったからだ。しかし、この薄ぺらな本には期待通りの情報は無かったのだ。 その散々書店を駆けずり回った苦労を思い出し、ライナは盛大な溜め息をついた。 「世界樹について詳しく書いてあるのはそれだけだったのにな…」 「仕方ないでしょう。あくまで世界樹は伝説。何も知らないこの世界の人にとって、作り物と認識されているんですから」 この2人が言う世界樹は『ユグドラシル』と呼ぶ世界に存在し、この目で確かに見た2人はそこから帰ってきて、早2週間。奇妙な経験からいつもの通りの日常に戻ったのはつい最近と言える。だが、2人は世界樹の事が気になり、それを調べている内に天空都市と言う伝説を見つけ、どうやら世界樹と天空都市は深い繋がりがあるようだと理解する。 「世界樹も天空都市も謎が多いですね。天空都市の伝説があるのはオリエント帝国の方ですし、私達が住んでいるミドカルド王国では、どうしても資料が無いのかもしれませんね」 先に進まない苛立ちからユアは小さな舌打ちをする。 伝説を調べるよりも大事な事が2つある。2人は、『ミスト学園』の卒業試験を明日に控えているのだが、それを忘れてのん気に伝説を調べ、そして問題児らしく、所属するミスト区の警備隊『アース』の制服をきたまま、墓地でサボっていた。 「なんで墓地なんだよ」 ライナは不服そうに頬杖をついた。 「それは、いつもサボるのに使っている図書館と月の丘は真っ先に探す筈だからです」 ユアは涼しい顔で言う。
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