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目の前に巨大で美しい塔と大樹が浮かび、世界樹から女神が現れ、手を差し出す。
輝く女神から何の疑問もなく、光り輝く物を受け取った――
「ん?」
寝返りを打った瞬間、今まで見ていた物が夢だと分かって何故か落ち込む。
しかし、何か固い物を握っている事に気づき、それを確認する為にまだ眠い目を開けた。
「鍵?」
鍵は黒い古びた鍵で、細部まで手のこんだ細工がされていた。
「なぁ、誰か俺の部屋に入った?」
朝一番に家族に聞く。ライナのその質問に家族は不思議そうな表情を浮かべた所を見ると、誰も入っていないようだ。
「まず飯を食え。お前らは朝から巡回だろうが」
ドリュウが言う。今日は、朝からアースの仕事があるのを思い出し、慌てて朝食を取ると、2人は外へ出る。
「朝のあの質問は何ですか?」
ユアが長い髪を結いながら聞いた。
ライナとユアはミスト区の街の巡回だ。他の者は魔物の出現率が高い『カバック山』を含め、街の入り口などを警戒し、見つけた魔物を狩る仕事だ。
万一を考え、2人も武器や簡単な装備をしている。
「あれな。これだよ」
ライナはポケットから鍵を出しユアに見せると、鍵をポケットにしまい、帽子を直していたが、ユアの言葉でそれを止める。
「私も持ってますよ」
ユアが見せたのは古い鏡で、裏には綺麗な石と飾りがついている。
「変な夢を見て…」
そう言いかけて、吸い寄せられるようにある物を見る。
「あぁ、見せ物だよ」
それは『鏡の国』と看板を掲げた、旅をする見せ物小屋だ。
「鏡…」
ユアは考え込むように顎に手を置く。
「行きましょう」
ユアの突然の提案で見世物小屋へ入って行くと、小屋の中は鏡ばかりで、蝋燭の明かりは薄暗い。
「気味悪いな」
「怖がりですね」
そう言いながらもユアはライナの服の端を掴む。
「そう言えば、月の丘で俺に抱きつき、その勢いで俺を丘から突き落としたよな?」
ライナは丘であった事を根に持っていた。
「嫌ですね。偶々ですよ」
ユアは軽く流す。
角を曲がると出口近くに不吉な程、黒い古びた姿見があった。
思わず足を止める。
「通らないと出れませんね」
ユアは嫌そうに一歩近づき、そのまま通り過ぎたが、ライナは足を止めて姿見の方を見た。
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