ラブレター

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その日は何だか落ち着かなくて、仕事中もどこか上の空だった。 具合でも悪いんじゃないかと心配され、週末はゆっくり休んで下さい、残業なんておれたちに任せてと、後輩たちから早々に職場を追い出された。 自宅への帰路、おれはこのまま真っ直ぐ帰っていいものなのか散々迷った。 何より恐れていたのは、彼の信頼を失うことだった。 彼に軽蔑されたり、呆れられるのはとても辛い。 機嫌を損ねたときのために、フォローする言葉を考えている自分に気づき、おれは自嘲した。 こんな誤魔化しはそれこそ彼に嫌われる。 おれは真っ直ぐ彼の待つ、自宅マンションを目指した。 「今日は早いんだね?」 珍しく彼はゲームの手を休め、おれを出迎えてくれた。 「やっぱり効果あった?」 彼は意味深な笑みを浮かべた。 おれはドギマギしながらスーツの上着を脱ぐ。 やはりあの手紙の差出人は彼だったのだ。 「着替えたら散歩しよう」 「夕飯は?」 「後で」 彼に誘われるままおれたちは、北風に枯れ葉が乾いた音を立てる、12月初めの夜の街へと歩き出した。
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