ラブレター

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ずっと引きこもりだった彼を心配し、人目の少ない夜の散歩を提案したのは約一年前だ。 でもこの一年で彼は徐々に外出できるようになった。 最初はおれと一緒でなければ、出かけなかった夜の散歩も、おれが風邪を引いて寝込んだのをきっかけに、一人でコンビニに行けるようになった。 今では昼間、地元の商店街までなら一人で行けるまでに成長した。 それはとても嬉しいことだ。 なのに一抹の淋しさもある。 彼はもっと遠くまで、おれの知らない遠いところまで、いつか出かけてしまえるようになるだろう。 「空が凍ってる」 「えっ?」 「冬の空っていいよね?」 「そうか?」 「僕が知ってる唯一の星座があるから」 彼は嬉しそうに星空を仰ぐ。 「そんなこと、ずっと忘れてた。お前が散歩しようって、僕を無理やり連れ出してくれなかったら、きっと一生思い出さなかった」 ふいに彼はおれの手を掴み、歩を早めた。 「こっちだよ」 彼に引かれるまま、おれも足を早める。 こんなふうに彼に先導されるのなんて、この十年間で初めてのことだった。 「始まってる」
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