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休日の朝、まどろみと覚醒の合間で過ごす時間は、とても心地いい。
平日の疲れがどっと押し寄せ、後で一日無駄にしたと後悔するくせに、この甘美な誘惑を振り切ってベッドから抜け出すのは、レベル1でボスキャラに立ち向かう位無謀に思える。
それでも腹の虫が鳴き出し、寝る前に散々飲んだことによる膨れ切った膀胱の限界を感じ、まどろみより覚醒が強くなる。
「起きるか…」
そう呟きながらも、毛布を肩まで引き上げる。
室内はとても静かだ。
まるで自分以外、誰もいないかのように。
でもこの部屋の居間にはおそらく自分よりずっと前に目覚めた「彼」がいる。
もしかしたら彼の寝室で、彼も同じようにぐだぐだしているのかもしれないが、外に出掛けていることはないはずだ。
「彼」は引きこもりで、ほとんど外に出ない。
部屋でパソコンかテレビに向かっている。
昼も夜も、ほぼ、一日中。
カタンとマンションドアの鍵が開けられる音。
バタンとそのドアが閉まる音で、おれは無為で甘美な世界を振り切った。
「やっと起きた」
彼は寝起きのおれに軽く失笑し、キッチンに向かう。
その手に白いレジ袋があった。
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