僕と君 -1-

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化学の授業が終わって、僕は君にあからさまに文句を言った。 「すかしてんじゃねぇよ」って。 君は一瞬、驚いてそれからこう言ったんだ。 「すかす? ごめん。そんなつもりじゃなかった」 「…うぜぇやつ」 君はキョトンとしてた。きっとウザいだなんて言われたことなかったんだろ? 怒ってさっさと出ていくだろうと思ってたのに、君はトンチンカンなことを言った。 「髪、綺麗だね」 僕の方があっけにとられて、何だか恥ずかしくなって、慌てて教室から出ていったんだ。 馬鹿じゃねぇの、あいつって思いながらね。 ただの優等生だと思ってた君への印象があの時変わった。 変なやつ。 僕にとってはいい意味での変なやつ。 君はきっと覚えてないだろうね。
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