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テレビ画面は今彼が取り組んでいるRPGのキャラが、スタートボタンが押されるのを待っていた。
「これ、面白いか?」
「そうでもない」
「テレビ見ていい?」
「いいよ」
特に見たい番組があるわけではない。
土曜の昼の番組なんて、毎週気にして見続けたいと思うようなものはない。
ただ彼と違いゲームはもっぱら格闘系かシューティングものしかやらなくなってしまった。
いくつになっても少年の心を失っていない彼。自分はすっかりオヤジだというのに。
リンゴを一個丸かじりし、少し満足してトイレに行き、顔を洗い、ヒゲを剃った。
髪をとかすとさっきよりは見られる顔になった。
居間に戻ると彼は包丁を手に、まな板に向かっていた。
料理はいつの間にか彼担当になっていた。
同居して約十年になる。一緒に暮らしているうちに、自然とそんな役割分担になってしまっていた。
「何作ってるの?」
「ナボリタン」
「おっ、懐かしい響き」
窓の外は晴天だ。
ぶらぶら出かけるには、ちょうどいい陽気だろう。
「たまには遊びに行かないか?」
「どこに?」
「どこでも。あんまり混んでないところなら、お前も平気だろ?」
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