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限りなく馬鹿だった。
そんな呼び名さえ当時の僕には栄誉に思えて、他人と深く付き合わないことが格好いい生き方だと信じていた。
在学中、デザインしたゲームキャラが運良く認められて、ゲームソフトメーカーに就職も決まり、自分には運と才能があると自惚れてた。
そんなとき、母から弟のことで連絡があった。
どうやら学校でいじめにあってるらしいと。
弟は君のように真面目な優等生だった。
素直ないいやつだったけど、大人しくて、人を引っ張っていけるタイプじゃない。
ちょうど受験とも重なっていて、いじめる方もストレスが溜まっていたんだと思う。
弟は学校に行かなくなっていた。何とか力になってやれないかと、母は僕に助けを求めてきたんだ。
僕は君のことを思い出した。
君と弟をだぶらせ、君がいじめで登校できなくなった。そんなふうに思ったんだ。
愉快だったよ。
優等生の君が人生の落伍者に。劣等生だった僕が成功者になったようで。
僕は母の頼みを断った。自分で何とかしなくちゃ、この先だってやっていけないだろうと。
恋人も家族も、僕には面倒な存在でしかなかったんだ。
そうしてあの事件が起こった。
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