ピロートーク

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世の中の男と女を比べたら、男より女の方がおしゃべりだ。 そう思うのは、職場の休憩所で絶え間なくしゃべり続けている女子社員を毎日目にしているからでも、よく行く八百屋のおばちゃんに、見合いしないかと会うたび言われるからでもない。 自分はどちらかと言ったら聞き役でいることが多く、大学時代付き合っていた彼女からも、無口だとよく嘆かれていた。 何でもいいから、もっとしゃべってくれないと、あなたのことがわからないじゃない、と。 会話は確かに相手をより深く知るための、コミュニケーションツールだ。 でもそんな常識など関係ない場合もある。 彼は無口だ。 おれ以上に。 彼と比べたら、おれはおしゃべりな男の部類に入るだろう。 一緒にいても、一言も口を利かないことさえある。 彼はゲームに興じ、おれは読書。 そんなのは日常茶飯事だ。 ゲーム中、彼はヘッドホンで音を拾っている。 だからおれはゲームのキャラは知っていても、バックに流れる音楽や効果音は全く知らない。 時々おれは読んでいる本から顔をあげ、鮮やかなテレビ画面と、それを反射する彼の眼鏡のレンズを眺めたりする。 彼が気づいて、少し首を傾ける。
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