自己紹介、されど我は………偽りを語る

2/3
171人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
「改めまして、俺の名前は黒鋼衛。よろしく」 衛がお辞儀をする。 「はい、こちらこそ」 絢音もお辞儀をし返す。 「や、これはご丁寧にどうも」 霙は頭を掻きながら頭を下げる。 「では、次は私の番ですね。始めまして。私の名前は綾瀬川絢音と言います。よろしくお願いします」 絢音は両手の指を揃えて行儀よくお辞儀をする。 「あ、どうも」 衛もつられてお辞儀をする。 「んじゃ、次は私だね。私の名前は雨那霙。よろしくな、衛!」 霙は衛の背中を叩きながら、自己紹介をする。 「何故いきなり名前で呼ぶ……しかもかなり元気な人だなぁ」 衛の呟きは、誰にも聞こえていなかった。 「次は雫の番よ。ほら、早く!」 「いや、でも、私は……」 「ホラホラ、早くしなさいっ!」 霙は雫の背中を押して、衛の前まで連れてきた。 「あ……いや。は、始めまして、雨那雫……………です」 雫は伏し目がちに自己紹介をする。 「どうも」 お辞儀をする衛。 「~~~~…………」 「……………」 「~~~~……………」 「………………(間がもたねぇ………)」 雫はうつむいたまま動かない。衛はどうしたらいいか分からず、ただ慌てるだけだった。 「さて!自己紹介も済んだし!衛、今日の放課空いてる!?」 霙が身を乗り出して尋ねてくる。 「いや……まだ部屋が片付いてないから……片付けないと………」 「そんなんあとでいいじゃん!!今日は転入生歓迎会だ!勿論絢音も来るよね!?」 「私はいいけど……霙、あなた部活はどうするの?」 「今日は早めに帰れば良いだけだよ。雫も来るよね!?」 霙は雫の方を向いて尋ねる。 「私はい………」 「決定!!んじゃ、放課に!」 「まだ私言ってないんだけど!」 霙と雫が言い合っている。 「いや……だけど、俺………」 「いいじゃん衛!行こうよ!」 紅蓮が肩に捕まってくる。 「え~~めんどいから嫌なんだけど………」 衛は渋る。どうやらそれが本音の様だ。 「俺達も行きます!!」 そこに、クラスの男子が皆集まって立っている。 「またむさいのが………」 衛は頭を押さえる。 「綾瀬川様や焔様が行くのだ!!ファンクラブが行かんでどうする!!」 白と朱のはちまきをしている集団。そのどちらもが火花を散らして睨み合っている。まさに一触即発だ。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!