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「標的(ガルダ)が出てきた」
ここは、ビルが立ち並ぶ市街。ビルだけじゃなく、マンションなどもあり、しかもその一つ一つが10階以上あるので、景観なんてあったものじゃない。この街は、元々は平坦な農家を営む人々が暮らしていた田舎だった。だがそこに無理矢理ブルドーザーやショベルカー等をぶち込み、美しいわけではなかったがそれなりに綺麗だった景色は見事に消えてなくなった。それがほんの10年前のことである。
「確認した。このまま終ってくれればいいんだが………」
空を見上げれば満天の星空が広がっている………はずだったが………
「そうだな。まぁ、折角禁忌まで犯したってのに何も起こらなかったって言うのも何か拍子抜けだな」
夜空は、空気が汚れているせいか星を見ることは出来ない。
「これで俺達も認めてもらえるな」
そんな星も見えない夜空の下で、二人の男が話し合っている。
「初仕事が大手柄か。うまく行けば幹部になれるかもしれないな」
だが、二人は別々の場所にいる。一人はこの街で一番高い25階建てのビルの屋上に。もう一人は、そこから5km程離れた12階建てのマンションの入り口付近の柱の影にもたれ掛る形で立っていた。
「上は怖がりすぎなだけだ。こんな禁忌、眉唾の都市伝説の類のもんだよ。現に今あともう少しで仕事が完遂するのに何も起こっていない」
二人の男は各々携帯を持って話をしていた。
「ガルダの予定地点到着まで、後118秒」
残り時間を耳にした屋上にいた男は、手に持った細長い黒光する筒を構えた。
「ガルダが車から出たところを狙え。頭を一撃で仕留めろ」
マンションにいる男は、手にした小型のディスプレイを見ながら屋上にいた男に言った。
「分かっている。俺の腕を信じろ、相棒」
屋上の男は、手にした細長い筒─スナイパーライフル─を握り直す。緊張から汗が身体中から吹き出る。
「ガルダ予定地点到着まで、残り73秒」
マンションにいる男は、刻々と時間を読みあげていく。
「残り20秒」
マンションの男は、手の汗を拭きながら、しかし目はスコープから離さない。
「来た!!」
マンションの男は、力強く標的の到着を告げた。
キキィッ!!………
黒いリムジンがマンションの前で止まる。中から屈強な男が数人現れ、まるで後ろの道を塞ぐかのように立つ。
「ご苦労」
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