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「って、本当に馬鹿ばっか」
衛は頭を抱える。
「黒鋼!!」
「はい!?」
突然クラスの男子達によるハモリコールが自分の名前を呼んだので、びっくりして背筋を伸ばす衛。
「貴様……抜け駆けは許さんぞ」
隊長らしき人物がそれぞれ、己のクラブの代表者として衛の前に立ち、衛に殺気を込めてそう言った。
「………はぁ。抜け駆けもくそも、そんな事するほど狂ってねぇよ」
去り行く隊長達の背中に暴言を吐き捨てた衛。しかし隊長達は自分のことだけで手一杯らしく、全く聞こえてないらしい。
「まぁ、本当の敵はすぐ身近に居るけどな………」
そう言って流し目で横にいる紅い悪魔を見る。
「衛~♪放課後皆で祝賀会決定だよ~!」
「はぁ!?」
紅い悪魔こと紅蓮は、笑顔で手を振る。おいおい、こっちの都合はお構いなしか?
「何~?もしかして、私達の申し出を断るつもり~?」
霙が何か含みのある目で見ながら、胸元に人指し指をグリグリさせてくる。キャバ嬢か己は。
「何ーー!!綾瀬川様と焔様のお誘いを断るだとぉ!!許せん、許せんぞぉぉぉ!!」
「我等なぞその神々しいお姿を拝見できるだけで至福の極みだというのに、貴様はお誘いを受けただけじゃなく、それを突き返そうと言うのかぁぁ!!」
「我等の心の奥底に眠る熱き情熱(パトス)を感じたのなら、今ここで貴様の取るべき道はただひとおつ!!お誘いをお受けするのだぁ!!」
ファンクラブは皆揃いも揃って涙目で絶叫する。しかもこっちを指差してくる馬鹿者もいる。つーかお前ら少し黙れ。熱い。キモい。ウザイ。
「はい、じゃぁ決定!逃げたら駄目よ♪」
霙はウインクしながら席に戻る。それを合図に、ファンクラブ達も各々の席に戻る。
「………………まぁいいか。対象"達"を見れる絶好の機会だと思えば………」
衛の呟きは、チャイムの音にかき消され、音を立ててドアが開き一時間目が始まった………
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