自分が昔いた表世界、今はもう戻れない夢世界

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「衛~。大丈夫か~?」 紅蓮が目の前で手を振る。 「あぁ、大丈夫だ。早く飯食わんといかんな」 そして、弁当を取り出す。紅蓮も何処からか椅子を引っ張ってきて、同じ机に弁当を置いた。 「………………まだ食ってなかったん?」 「うん♪衛と一緒に食べようと思って」 紅蓮は今まで見たことのない眩しい笑顔で微笑み掛けてくる。 「ま、眩しい!これは……ソー〇ーシステム!?」 「わけの分かんない事言ってないで、食べよ」 紅蓮は既に蓋を開け、中身をつついている。 「焔さん!私達も一緒に食べていい?」 突然声がする。その方向をみると、霙が絢音と雫を率いて紅蓮に話しかけていた。 「いーよいーよ♪皆で食べよーー♪」 紅蓮はにこやかに承諾する。ハッハー、俺の意志は完璧無視かい。 「ありがとー!それじゃ、失礼しま~す♪」 霙が余所の机をくっつけてくる。何時しか俺の周りは女子だらけになってしまった。 「(だ、駄目だ!耐えれない!逃げなきゃ駄目だ、逃げなきゃ駄目だ、逃げなきゃ駄目だ、逃げなきゃ駄目だ、逃げなきゃ駄目だ、逃げなきゃ駄目だ………)」 俺は立ち上がり、 「ど、どうやらお邪魔みたいなので、退散させていただきま~す……」 と言って、そそくさ逃げる。 「君がいなきゃ意味ないの!」 と、霙に袖を掴まれた。というか、捕まった。 「ハハハ………視線が痛い………」 周りからは、嫉妬と憎悪の視線の攻撃が……… 【真・天の声】いや~、人気者は辛いねぇ!!このラッキースケベ! 「黙れ!参戦すんなアホ!」 こうなったら早く飯を食べて逃げよう。そう思って弁当を掻き込む。 「フフッ、あんまり慌てて食べると喉を詰らせますよ」 絢音が、ハイ、と言いながらお茶を置いてくれた。 「あ、ども」 頭を下げてお茶を見る。 「(湯呑み………?何処から?)」 頭を上げると、繋げた机の真ん中に、お盆と急須が置いてあった。 「(お盆に……急須……?何処にそんなものが………)」 周りを見回すと、絢音も既に席について弁当を食べている。雫はさっきから、一言も発さないでモクモクと弁当を食べていた。霙に至っては、紅蓮と話し込んでいる。それでも着々と弁当の中身が減っている辺り、かなり食べるスピードが速いなぁ、と物思いに耽る。 「…………とりあえず食うか」 こっちもバクバクと弁当を食べる。ものの五分で平らげてしまった。緊張からか、味は分からなかった。
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