171人が本棚に入れています
本棚に追加
「衛~。大丈夫か~?」
紅蓮が目の前で手を振る。
「あぁ、大丈夫だ。早く飯食わんといかんな」
そして、弁当を取り出す。紅蓮も何処からか椅子を引っ張ってきて、同じ机に弁当を置いた。
「………………まだ食ってなかったん?」
「うん♪衛と一緒に食べようと思って」
紅蓮は今まで見たことのない眩しい笑顔で微笑み掛けてくる。
「ま、眩しい!これは……ソー〇ーシステム!?」
「わけの分かんない事言ってないで、食べよ」
紅蓮は既に蓋を開け、中身をつついている。
「焔さん!私達も一緒に食べていい?」
突然声がする。その方向をみると、霙が絢音と雫を率いて紅蓮に話しかけていた。
「いーよいーよ♪皆で食べよーー♪」
紅蓮はにこやかに承諾する。ハッハー、俺の意志は完璧無視かい。
「ありがとー!それじゃ、失礼しま~す♪」
霙が余所の机をくっつけてくる。何時しか俺の周りは女子だらけになってしまった。
「(だ、駄目だ!耐えれない!逃げなきゃ駄目だ、逃げなきゃ駄目だ、逃げなきゃ駄目だ、逃げなきゃ駄目だ、逃げなきゃ駄目だ、逃げなきゃ駄目だ………)」
俺は立ち上がり、
「ど、どうやらお邪魔みたいなので、退散させていただきま~す……」
と言って、そそくさ逃げる。
「君がいなきゃ意味ないの!」
と、霙に袖を掴まれた。というか、捕まった。
「ハハハ………視線が痛い………」
周りからは、嫉妬と憎悪の視線の攻撃が………
【真・天の声】いや~、人気者は辛いねぇ!!このラッキースケベ!
「黙れ!参戦すんなアホ!」
こうなったら早く飯を食べて逃げよう。そう思って弁当を掻き込む。
「フフッ、あんまり慌てて食べると喉を詰らせますよ」
絢音が、ハイ、と言いながらお茶を置いてくれた。
「あ、ども」
頭を下げてお茶を見る。
「(湯呑み………?何処から?)」
頭を上げると、繋げた机の真ん中に、お盆と急須が置いてあった。
「(お盆に……急須……?何処にそんなものが………)」
周りを見回すと、絢音も既に席について弁当を食べている。雫はさっきから、一言も発さないでモクモクと弁当を食べていた。霙に至っては、紅蓮と話し込んでいる。それでも着々と弁当の中身が減っている辺り、かなり食べるスピードが速いなぁ、と物思いに耽る。
「…………とりあえず食うか」
こっちもバクバクと弁当を食べる。ものの五分で平らげてしまった。緊張からか、味は分からなかった。
最初のコメントを投稿しよう!