†中絶…†

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    病院に着いて、受付はお父さんがしてくれてお母さんは私に付きっきりだった。       受付の間、乗り物酔いも重なったせいかトイレでもどしてしまった。       お母さんに支えられ、揺れる世界の中をふらふらと歩く。         「嘉奈衣、大丈夫か?!」       「う…ん、大丈夫だから…お父さん心配しないで」     「それならいいが…一応内科に受付しておいたからな、三階まで歩けるか?」       「…エレベーターがいいかな…」         「またひどくなったら、すぐに言ってね?」     「ありがと、お母さん…」             エレベーターに乗り込む間も、お母さんは絶えず背中をさすってくれる。       待合室に着いた後は、名前を呼ばれるまではずっと気を紛らわそうと音楽を聞いてた。                   “ずっと気付かなかった     特別な出来事が幸せなんじゃなくて     こうして生きてることが幸せって事       平凡な毎日が一番     実はかけがえのない一瞬なんだ     今を生きるこの瞬間が     僕らに与えられた何にも代え難い奇跡”             いつも何気なく聞き流していたフレーズ         今は、何故か心に響いた。    
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