†中絶…†

5/19
前へ
/369ページ
次へ
      「朱槻さーん、朱槻嘉奈衣さ-ん!」     待合室に響く呼び声に気付き、イヤホンを外す。       「はい………んっ…」     「大丈夫?立てる?」       「うん…大丈夫」         お母さんの肩に手をかけ重い体をなんとか立ち上がらせる。     一瞬、立ち眩みでふらつく足下       「朱槻さん大丈夫ですか?」       「はい…大丈夫です…」         「診察室は三番のお部屋ですので…早く診てもらって良くなってくださいね…」         「…ありがとうございます」         診察室までが、やけに遠く感じられた       「父さんはここの医者に知り合いがいてな、そいつに九條先生に診てもらえるように頼んでもらったんだ」       「九條先生…?」         「すごい腕利きの医者だって評判でな、女性の方だし安心だぞ?」         「へぇ…嘉奈衣、良かったわね!」           「…え…うん…」             腕利きの医者…       普段ならどれほど心強い言葉だろうか。        
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1338人が本棚に入れています
本棚に追加