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「朱槻さーん、朱槻嘉奈衣さ-ん!」
待合室に響く呼び声に気付き、イヤホンを外す。
「はい………んっ…」
「大丈夫?立てる?」
「うん…大丈夫」
お母さんの肩に手をかけ重い体をなんとか立ち上がらせる。
一瞬、立ち眩みでふらつく足下
「朱槻さん大丈夫ですか?」
「はい…大丈夫です…」
「診察室は三番のお部屋ですので…早く診てもらって良くなってくださいね…」
「…ありがとうございます」
診察室までが、やけに遠く感じられた
「父さんはここの医者に知り合いがいてな、そいつに九條先生に診てもらえるように頼んでもらったんだ」
「九條先生…?」
「すごい腕利きの医者だって評判でな、女性の方だし安心だぞ?」
「へぇ…嘉奈衣、良かったわね!」
「…え…うん…」
腕利きの医者…
普段ならどれほど心強い言葉だろうか。
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