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あたしは耳を傾ける民衆の間を進む。
『…昔々、この世界には人間と妖魔人という種族が、仲良く共存していました』
皆、少しざわめいたが、すぐ夕羅の話に集中しだした。
彼の凛とした声に、不思議と誰もが呑み込まれてゆく。
国王も兵士も……架那たちでさえも同じで、動けずにいた。
『しかし、ある時。自分たちとは違う能力を持つ妖魔人を、人間は忌み嫌う様になりました…』
……いつか、彼があたしにも聞かせてくれた話。人間たちが、忘れてる昔の出来事…。
『人間から棲みかを追われた妖魔人たち。…長い、長い間、彼らの多くは人間を憎んだ……でも、時間は経ち、時代は変わる』
足がもつれて転びそうになるが、どうにか堪える。
あたしは観覧席の最前列まで、やっと辿り着き、一旦、息を整えた。
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