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……あたしは、誰かに訊きたかった事を、口にした。
「…人間じゃないヒトを、好きになるって…いけない事かな…」
――妖魔人と人間。
あまり考えないようにしてたけれど…。その間には、見えない壁がある……。
今は近くにいても、いつかは離れてしまうんじゃないかって。
不安な気持ちが、胸の中に渦巻いて……。
「………彼は、確か…ヨウマビト、の王子様だっけ?」
「うん…」
里乎は、夕羅の話を…妖魔人の存在を、信じたのだろうか。
「うーん…難しいわね」
「難しい?……やっぱり、いけない事って意味?」
すると、里乎はにっこり笑って言った。
「ううん、そうじゃなくて。単純に考えた方が、いいんじゃない?」
『単純に』……?
「………」
黙ってしまったあたしに、彼女は微笑み、部屋を出て行った。
「…じゃあ、またね。綺流兎」
……里乎が行ってしまった後。あたしは呟いてみた。
「単純に、…か」
繋いだままの、夕羅の手に。あたしは空いてる右手で、そっと包み込む。
ふと、指輪が視界に入った。
相手を想う気持ちが強ければ、ペアの指輪は外れない……って、架那に教えてもらったんだっけ……。
「そっか…単純、でいいんだ。」
あたしはしばらく、夕羅の寝顔を見つめた後。
再び眠りに落ちていった……。
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