第7章 長い一日の終わりと始まり

15/15
前へ
/110ページ
次へ
 ……あたしは、誰かに訊きたかった事を、口にした。 「…人間じゃないヒトを、好きになるって…いけない事かな…」  ――妖魔人と人間。  あまり考えないようにしてたけれど…。その間には、見えない壁がある……。  今は近くにいても、いつかは離れてしまうんじゃないかって。  不安な気持ちが、胸の中に渦巻いて……。 「………彼は、確か…ヨウマビト、の王子様だっけ?」 「うん…」  里乎は、夕羅の話を…妖魔人の存在を、信じたのだろうか。 「うーん…難しいわね」 「難しい?……やっぱり、いけない事って意味?」  すると、里乎はにっこり笑って言った。 「ううん、そうじゃなくて。単純に考えた方が、いいんじゃない?」  『単純に』……? 「………」  黙ってしまったあたしに、彼女は微笑み、部屋を出て行った。 「…じゃあ、またね。綺流兎」  ……里乎が行ってしまった後。あたしは呟いてみた。 「単純に、…か」  繋いだままの、夕羅の手に。あたしは()いてる右手で、そっと包み込む。  ふと、指輪が視界に入った。  相手を想う気持ちが強ければ、ペアの指輪は外れない……って、架那に教えてもらったんだっけ……。 「そっか…単純、でいいんだ。」  あたしはしばらく、夕羅の寝顔を見つめた後。  再び眠りに落ちていった……。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

270人が本棚に入れています
本棚に追加