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私はいちかばちか、剣を両手で握り締めセイレーンに念じた。
(次の一撃に全てをかける)
デスサイズが不気味に笑いながら大鎌を飛ばしてきた。
「はぁぁあぁ!」
ガキィィィン
高らかに響き渡った金属音、剣と大鎌が全力で打ち合うと、大鎌は、音を立てて砕け散った。
「ぎぃやぁぁあぁ!」
砕け散った鎌からデスサイズ本体の悲鳴が聞こえた。
「た、倒した……」
デスサイズの呪縛から解放された倖がその場に崩れる。
私は、ふらふらとした足取りで倖に近寄ると、精一杯抱き締めた。
私の手から剣が、ゆっくりと地面に落ちた。
「ご、ごめんなさい私が……」
彼は、いつもの笑顔に涙を浮かべ、私を抱きかえした。
「ゆず……俺が弱かったばかりに……すまない」
私は、涙ながらに黙って首を横に振った。
「遠く……高く……飛んでゆくよ……光り輝く翼で……遥か天を……目指してボクは……この空を飛び立つよ……」
とめどなく涙を流し、あのエアリアルを歌った。
倖が金色の砂となり、風に流されていった。
地面に落ちた蒼き剣を拾い上げると、天に掲げた。
「私達は、いつまでも共に」
剣を自分に向け、垂直に降り下ろす。
ズシャアァァ
倖との思い出が走馬灯のように頭を巡ると、私は、青い光を放ち消えていった。
モノクロの世界が、元の色を取り戻すと、夕日に染まった海は静かに波打っていた。
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